北欧、インド洋、太平洋、そしてオセアニア――アイルランド大海嘯から一か月。断片の戦火はつながり、巨大な津波となって世界を呑み込んだ。
アイルランドの大海嘯から数えて一か月。観測盤に記された数々の異変は、もはや孤立した事件ではなかった。北欧戦線の活性化、フランスがユニオン島に布石を打ち、アメリカはハワイに旗を掲げ、インドネシア・ロテ島や大ニコバル島では海底ケーブルのざわめきが響いた。さらにオセアニアのオーストラリア、そしてアジアの心臓部シンガポールまでもが覚醒した。
これら一連の動きは、戦局が単なる大陸戦争の域を越え、大洋戦争として展開しつつあることを雄弁に物語っている。かつて点であった戦火は線となり、線は面へと拡張し、やがては世界全体を覆う津波へと変じた。
欧州ではドイツ・アメリカ・アイルランドが依然として主力を振るい、北欧ではスウェーデンとフィンランドが抵抗を示す。一方でその裏側の海洋では、シンガポールを筆頭に新たな海洋ノードが次々と火を吹き、オセアニア戦線も勃発した。大陸と外洋が互いに呼応するように、戦局は幾重にも折り重なっている。
総計503リクエストのうち、アメリカ188、シンガポール167、ドイツ94。さらに中国、オランダも参戦の兆しを見せている。この数字は単なるトラフィックではなく、「どこに戦火が及んでいるのか」を示す地図である。津波はもう、世界をすっかり飲み込んでしまった。
「大海嘯」という語は、アイルランドの異変に端を発した比喩であった。だが今やそれは単なる比喩ではない。欧州の大地も、アジアの海洋も、太平洋の島々も、その津波に呑まれている。津波とは比喩にして現実、そして現実を超える象徴である。
この津波を乗り越えられるか、それとも押し流されるか――次なる戦況は、世界を均す津波の余波の中で描かれていくことになる。