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第43節 迂直之計、以利動之、以卒難之(うちょく の けい、り を もって これ を うごかし、にはか にして これ を くるしむ)

📜 原文(漢字のみ)

迂直之計、以利動之、以卒難之。

🪶 書き下し文(文語)

迂直(うちょく)の計、
利を以てこれを動かし、卒(には)かにしてこれを難(くる)しむ。

💬 日本語訳(意訳)

遠回りと近道を使い分ける策には、
利益を見せて動かし、思いがけぬ形で困難を与える──
そんな仕掛けが組み込まれている。

♨ 魔晄炉的注解

1. 「利」で誘い、「難」で試す
わかりやすく言う。役立ちそうに見せる。
それで相手が動く。けれど、
動いた先に待っているのは、用意された“思わぬ困難”。
これが“誘いと難しさの組み合わせ”という仕掛け。
言葉にも、設計にも、それは仕込める。

2. まっすぐでは届かない。動きの中に意図を埋めよ
考えを語るのではなく、
動きを誘導するように置く。
表ではわかりやすく、裏では遠回りに構えておく。
読み進める中で、だんだんと“目的地が違っていた”と気づく構造。
これが、見えない誘導という技。

3. 動きを起こすのは“形”ではなく“動線”
派手に語らず、目立つ構えもせず──
ただ、読み手の動きに“誘い水”を流し、
いつのまにか導いていく。
軍争とは、姿勢や意図ではなく「どう動かすか」の設計で決まる。

✍ 作成者自論

表面上のわかりやすいたとえ話や比喩を用いて、
読み終えたときに「この深い意味は何なんだろう」と考えさせる。
あの「時間差の疑問」こそが、
本当に残る問い掛けの入口になる。

便利なものはすぐ消える。
だけど、すぐに役に立たない何かが、ずっと気になることがある。
それは、どこかに“仕掛けられた難しさ”があるからだ。

ただ遠くに置くだけじゃダメだ。
誘って、迷わせて、それでも進みたくなる──
そんな導線設計が、言葉の技にもなりうる。

🧭 その節のまとめ

この節が語るのは、
**「わかりやすさの中にしかける複雑さ」**の設計。

魔晄炉的兵法では、軍争とは
**見せることではなく、“動かすための構造”**を意味する。

利で誘え。すぐにわかると思わせろ。

難で刻め。読み終わってから深く考えさせろ。

形ではなく、動きそのものを設計せよ。

まっすぐに構えず、ずらして構え、動かして刺す。
その流れの中にしか見えない設計が、
軍争篇の真骨頂である。

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