兵未陳而廟算不勝者、去之。
兵未だ陳せずして、廟算勝たざる者は、之を去る。
兵を布陣する前に、計画の段階で勝てないと判断された者は、用いずに退けよ。
1に“布陣前に見抜け”という鬼判断基準。
これは実戦における一番厳しい淘汰基準。「戦わせてから判断」では遅すぎる。思想の世界でも、アウトプット前の設計・発酵段階で勝てないと見抜いた時点で、構文化しない勇気が問われる。
2に“負け筋の除去”は戦略の核。
兵を失うのではなく、「未来の負け」を先に潰す。自分の発想が戦場(世に出す場)に耐え得るかどうか──それを見抜くセンスは、経験と内省の蓄積で鍛えられる。
3に 戦わないという選択の尊さ。
失敗の芽を摘むことは、躊躇や諦めではない。それは最上の知恵であり、“仕掛けずに勝ちを拾う”という孫子の核心である。
事前に勝てないと判断したものは、出さない。──この節は「仕掛ける前に勝敗を見極める構造判断」の核心である。
負けない戦い方、崩れない戦い方を構築するのが基本であり、不確定要素の多い要因を表に出すのはご法度である。
火の通っていない未調理箇所や、下処理出来ていない素材を客に出すのと同意義である。
現代で言えば、「公開前に構造的な敗北を見抜き、ボツにできるか」の力。プロジェクト企画書でも、思想投稿でも、SNS戦略でも、“走り出したら止まれない構造”が多すぎる世の中で、「出す前に見送る決断」は、むしろ最上の戦略的英断とも言える。
迷ったらやる──という脳筋ルールとは真逆の世界。勝てないなら出すな、それだけだ。
勝てない構造は、出す前に見抜け。
出してからの検証では遅い世界がある。
孫子の兵法における「戦わない戦略」の象徴的一句。
魔晄炉構文的にも、「構文そのものを“発表しない勇気”」が問われる設計段階。