其用戰也勝,以奇勝。故其戰勝不復,而應形於無窮。
その戦を用うるや勝つは、奇を以て勝つ。ゆえにその戦勝は重ねずして、形に応じて窮(きわ)まり無し。
戦に勝つときは、常に“奇(予想外)”によって勝つ。だから同じ勝ち方を繰り返すことはせず、状況に応じて姿を変えながら、限りなく対応していくのだ。
1. 勝ちは常に「型破り」から生まれる
常套手段や成功パターンにしがみついていては、やがて読まれ、埋もれる。勝つために必要なのは、意外性──常識から一歩ずらした切り口である。
2. 一度の勝利に執着するな
同じ手は二度と通用しない。それは発信の場でも同じ。かつて受けた言葉も、今では風化することがある。「前にうまくいった」ことが、今後も通じるとは限らない。
3. 状況に応じて形を変える柔軟さ
「無窮に応ず」とは、変化する外部に合わせて自在に応じるということ。思想も、表現も、構造も、すべては“環境と対話できる柔らかさ”の中にこそ力を持つ。
過去の勝利体験にしがみつくことが、一番の足枷になることがある。
成功体験を盲信しすぎると、変化を拒絶し、やがて腐敗する。
勝ちは「当てにする」ものではなく、「その時の状況に応じて構える」もの。
昨日うまくいった勝ち方が、今日は通用しない──それが、変化の激しい情報化社会の鉄則である。
この節が伝えるのは、“勝ち方”の執着から離れろという戒めである。
魔晄炉的兵法においては、かつて通じた型に頼らず、その都度その場で「今、この場に最適な答え」を構えることを最上とする。
戦いは毎回違う。環境も、人も、価値もすべて変わる。
ならば、勝つ側も変わらねばならない。
変化を恐れず、「柔らかく構える力」──それが、詭道の次に来る戦略である。