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第8節 凡用兵之法,馳車千駟,革車千乗,帶甲十萬,千里饋糧(およそ へい を もちうる の ほう は、ちしゃ せんし、かくしゃ せんじょう、たいこう じゅうまん、せんり に して りょう を おくる)

📜 原文(漢字のみ)

凡用兵之法,馳車千駟,革車千乗,帶甲十萬,千里饋糧,則內外之費,賓主之用,膠漆之材,車甲之奉,日費千金,然後十萬之師舉矣。

🪶 書き下し文(文語)

およそ兵を用うるの法は、馳車千駟、革車千乗、甲を帯びたる者十万、千里にして糧を饋(おく)れば、すなわち内外の費え、賓主の用い、膠漆の材、車甲の奉ずること、日々に千金を費す。しかる後に十万の師、挙ぐるなり。

💬 日本語訳(意訳)

戦を起こすには、大量の戦車や装備、十万の兵を動員し、遠方から食糧を送り続けなければならない。そのためには、内と外の経費、もてなしや材料、兵器の整備にかかる費用──すべてが日々膨大な支出となる。こうしてようやく、十万の軍が動き出すのだ。

♨ 魔晄炉的注解

1. “動く”ということは、“支える”ことでもある
見える行動の裏には、見えない維持がある。思想を発信するにも、構築・準備・更新・対話──その全てに時間と労力がかかる。何かを動かすとは、それだけの負荷を背負うということ。

2. 無計画なスタートは“崩壊の予約”
情熱だけで走り出しても、土台がなければすぐに限界がくる。公開・運営・応答・維持、それらに必要な費用や時間の目算がなければ、始めた瞬間から崩れる準備が始まっている。

3. 思想とは“日費千金”の覚悟で運ぶもの
小さな言葉でも、それを届け続けるには想像以上のコストがかかる。気軽な一文にすら「運ぶ力」が要るのだ。発信とは、意見を出すことではなく、“残す”こと。残すには覚悟がいる。

✍ 作成者自論

事を始めるにあたり、コストがかかるのは私生活においてもビジネスにおいても至極当然である。
コストのない成果物を探す方が、むしろ困難だ。
重要なのは、かかるであろう負担をいかに念頭に置き、それを制御できるか。
最小のコストで、最大のパフォーマンスを上げる──それに越したことはない。

🧭 その節のまとめ

この節は「戦うには莫大なコストがかかる」という事実を突きつけている。
魔晄炉的兵法では、“始めること”を軽んじない。
公開とは消費であり、構築とは維持であり、思想とは燃料でもある。
何かを広げようとするその瞬間、見えない“日費千金”の責任が始まっている──
それでもやるか?それでも届けたいか?
それが、すべての起点である。

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