能使敵之前後不相及、衆寡不相恃、貴賤不相救、上下不相收、卒離而不集、是謂用間之勢也。
能(よ)く敵の前後をして相及ばざらしめ、
衆寡して相恃(たの)まず、貴賤して相救わず、上下して相収めず、
卒(そつ)を離して集めず、
これを**間を用うるの勢(いきおい)**と謂(い)うなり。
敵の前と後ろを分断し、多くても少なくても支え合えず、
身分の上下も助け合わず、部隊が離れたまま再結集もできない──
このように**敵の内部連携を断ち切ることが、“間者の勢い”**と呼ばれる。
1. 敵を砕くより、繋がりを断て
力で正面から破るのではなく、
敵の内側にある“支え合い”の構造を壊す方が早い。
それは組織でも、場の空気でも、
ネット空間でも同じだ。
2. 分断は“構造”で起こすもの
人と人の関係を壊すのではなく、
相手の動線・視野・判断軸にズレを生じさせる。
前後を届かせない。
上下を連携させない。
その仕組みを意図的に“成立させない構造”に置くこと。
3. 力ではなく“間”を使え
この節の「間」とは、情報の隙間であり、意図の断絶であり、
見えないまま効いてくる“配置による非連携”の力。
攻撃せずとも、
連携さえ断てば敵は崩れる。
これが、「用間の勢(ようかんのせい)」──
直接戦わずに崩す磁場の作法である。
組織も人間関係も、道路のインフラやサイトの構築ひとつにとっても
必ず、連携やつながりがある。
そして、つながっている部分は必ず存在する。
敵を果敢に攻め立てなくても、
相手が自分で連携を失っていけば、
勝負は始まらずに終わる。
それは、「攻めない」ではなく、
**“崩れる構造を見極める”**ということ。
「柔よく剛を制す」も、この一連の流れに含まれる。
ぶつからない。遮らない。
ただ、繋がらないように整えておく。
“間者の勢い”である。
この節が教えるのは、戦いとは破壊ではなく、分断の設計であるということ。
魔晄炉的兵法において、用間の勢とは:
つながりを断ち、孤立を生ませ、支援線を切る構造。
攻撃ではなく、非接続の配置によって崩れを誘う磁場。
何もせずとも、相手が自壊する構えの置き方。
繋げるな。支えさせるな。
敵が敵同士で機能しなくなる構造を、そっと作れ。
それが、戦わずに支配する“間”の力である。