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第18節 故善用兵者,屈人之兵而非戰也(ゆえに へい を よく もちうる もの は、ひと の へい を くっして たたかわず)、拔人之城而非攻也(ひと の しろ を ぬいて せめず)、毀人之國而非久也(ひと の くに を ほろぼして ひさしからず)、必以全爭於天下(かならず もって まったく てんか に あらそう)、故兵不頓而利可全(ゆえに へい とどこおらずして り を まっとうす)、此謀攻之法也(これ ぼうこう の ほう なり)

📜 原文(漢字のみ)

故善用兵者,屈人之兵而非戰也,拔人之城而非攻也,毀人之國而非久也,必以全爭於天下,故兵不頓而利可全,此謀攻之法也。

🪶 書き下し文(文語)

ゆえに兵をよく用うる者は、人の兵を屈して戦わず、人の城を抜いて攻めず、人の国を滅ぼして久しからず、必ずもって全く天下に争う。ゆえに兵頓まずして利を全うす。これ謀攻の法なり。

💬 日本語訳(意訳)

戦を上手く運ぶ者は、戦わずして敵を屈し、攻めずして城を落とし、長期戦にならずに国を制する。
できるだけ完全な形で天下に勝負を挑み、消耗せずに最大の利益を得る──これが謀攻の基本である。

♨ 魔晄炉的注解

1. 最小の力で最大の結果を取る者が“戦略者”である
戦わずに勝ち、壊さずに奪い、長引かせずに決める。
この節は、武力や破壊ではなく、「影響力と設計」の優位を語る。
最善の勝ちは“完全に勝つ”ことではなく、“傷を残さず勝ち終える”ことである。

2. 壊す者ではなく「使える形で残す者」になれ
徹底的に叩き潰すことより、相手の機能・仕組み・価値を生かして取り込む方が深く支配できる。
本当に制したいなら、相手の骨格を壊すな。構造を奪え。

3. 利を得るには「兵を削るな」
消耗せずに制するためには、“部分ではなく全体”を見て動く必要がある。
目の前の勝利に飛びつけば、次の戦が立たない。
継続して動ける体制こそが、本物の制圧力を生む。

✍ 作成者自論

破壊しない勝ち方を選べる者は、視野が広く深い。
時間・信用・労力──それらを残したまま勝てたなら、次がある。
徹底排除や全否定で勝っても、得られるのは“空地”だけになる。
壊すことで得る支配には限界がある。
奪うなら、価値ごと奪え。

🧭 その節のまとめ

この節が教えるのは、「非破壊による制圧」の思想である。
魔晄炉的兵法では、“徹底勝利”よりも “完全に近い形で残す勝利” を重視する。
勝っても動けないなら、意味がない。
潰してしまえば、使えない。
次を見据える者は、壊さず制す。
勝ちたいなら、全部壊すな。未来まで持っていけ。

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