勢者、因利而制權也。
勢とは、利に因りて権を制するなり。
勢いとは、有利な条件を基盤に、主導権(権)を支配することである。
1. 勢いは「作られる」もの
勢とは、自然発生的なパワーではなく、整えられた有利条件(利)をベースに動き出す流れ。
偶然ではない。準備と整備の結果として“湧く”もの。
2. 利=条件、制=設計、権=主導
「利」は地形・配置・情報・構文環境など、“状況的有利”。
「制」はその活用設計であり、
「権」はその場を握る“動かせる力”。
勢とは、これらの一連の構造制御プロセスである。
3. 勢を持つとは「構造を支配している」状態
見えない力、静かな優位、それが“勢”。
敵を押しのけるのではなく、敵が動けないように“空気”を支配すること。
勢いとは力ではなく、「環境の指揮権」である。
勢いは湧くものではない。整えた先に“勝手に生まれるもの”である。
有利な配置、空気の設計、関係性の整備──すべてが勢を生む土壌になる。
状況において、設計において、立場や利害において有利であることが一番の条件である。
そしてその勢は、力を振り回すものではなく、“動かさずに支配する磁場”になる。
自分の勢を相手に使わせること。
それが、見えないまま動きを決定づける本当の主導権である。
この節が語るのは、「勢いとは設計された力」だということである。
魔晄炉的兵法において、“勢”は熱量ではなく状況制御の副産物であり、
「利を因(よ)りて、制し、主導を握る」プロセスそのもの。
勢は運でも激情でもない──
勢は、条件×設計×支配 = 構造主導のエネルギーである。