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第6節 計利以聽,乃爲之勢,以佐其外(り を はかりて これ を きき、すなわち これ が いきを なして、その ほか を たすく)

📜 原文(漢字のみ)

計利以聽,乃爲之勢,以佐其外。勢者,因利而制權也。

🪶 書き下し文(文語)

利を計りてこれを聴き、すなわちこれが勢を為し、その外を佐く。勢とは、利に因りて権を制するなり。

💬 日本語訳(意訳)

勝ち筋を計算し、それに従って戦いの勢い(態勢)をつくる。そしてその勢いが、外側からの要素にも作用していく。
勢とは、有利な状況をもとに、主導権を握ることである。

♨ 魔晄炉的注解

1. 有利の先にある「勢い」は計算でつくるもの
流れや反応に任せて“なんとなく波に乗る”のではなく、事前の判断によって波をつくり出す。それが「勢」。偶然の産物ではなく、準備と配置の結果である。

2. 勢いは孤立しない──外にも波及する
環境や相手の状況を読み、それに応じた態勢を組むことで、こちらの動きが相手の判断にも影響を及ぼす。勢いとは単独の力ではなく、周囲を変える磁場そのもの。

3. 有利な条件をどう使うか、それが“権”を生む
得た利をただ保持するだけでなく、状況を支配するためにどう使うかが重要。“持っている”だけでは動かない。使って初めて、主導権=権を握ることができる。

✍ 作成者自論

「波に乗る」と「波を作る」は似て非なるもの。
先に状況を読み、どう有利を活かすか設計していれば、流れは向こうからやってくる。
ただしその時、握ってる“利”をどう扱うかで、その流れが味方になるか敵になるかが決まる。

🧭 その節のまとめ

この節は、「勢いとは戦略の副産物」であることを教える。
魔晄炉的兵法において“勢”とは、運や反応ではなく、利の活用によってつくられる空気・流れ・主導性のこと。
単に情報を持つだけでは足りない。
どう動き、どう流し、どう影響を及ぼすか──それが“制権”であり、思想を生かす術である。

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